
文部科学省 科学研究費助成事業 「学術変革領域研究(A)」 2024〜2029年度
2026年3月17日に東京科学大学で開催された第73回応用物理学会春季学術講演会において、シンポジウム「バイオ・エレクトロニクス・フォトニクスの融合によるニューロモルフィックコンピューティング(Neuromorphic computing at the convergence of biology, electronics, and photonics)」(オーガナイザー:山本、砂田)を開催しました。

当日は、各分野の第一線で活躍する研究者8名を招待講演者として迎え、さらに一般講演3件を含む計11件の講演が行われました。講演では、領域メンバー5名が登壇しました。酒井先生(A02 公募代表)からは、柔軟バイオエレクトロニクスと多点電極アレイを用いた培養神経回路の構造制御および計測技術について発表があり、軸索や三次元神経ネットワークの機能解析に関する成果が示されました。池内先生(A02 公募代表)からは、オルガノイド研究の概要およびBrain Processing Unit(BPU)の概念が紹介されるとともに、大脳オルガノイド同士を接続することで回路構造の機能的変化を誘導する手法や、知的機能の発現に関する結果が報告されました。香取先生(A01-2代表)からは、リザバーコンピューティングに基づく予測符号化モデルが提案され、多感覚統合やノイズ適応を実現する生体的情報処理の計算原理が示されました。酒見先生(A01-3 公募協力・信川班)からは、アナログ・インメモリ計算の数理基盤の整理に加え、非理想性を考慮した設計手法および超低消費電力AIの実現に向けた回路技術が提示されました。齋藤さん(A02-1 山本班・修士)からは、実細胞神経回路を用いたリザバー強化学習系の構築について発表があり、迷路探索タスクを通じてネットワーク規模が学習性能に与える影響が示されました。これらの講演を通じて、理論・デバイス・システムに至る階層的視点を含む、多角的な研究動向が共有されました。
会場には82名、オンラインでは33名が参加し、講演ごとに活発な質疑応答が行われるなど、分野間の相互理解を深める有意義な議論が展開されました。生体神経系の理解からハードウェア実装、計算原理に至るまでの連携の重要性が再認識されるとともに、光・アナログ技術を基盤とした低消費電力化や、生体と人工システムの相互作用を通じた新たな知能創発の可能性が示されました。(文責・砂田哲 (金沢大学)、A02-1 守谷哲 (東北大学))

| Time | Title / Author |
|---|---|
| 13:30-13:35 | オープニング 山本 英明 (東北大) |
| 13:35-14:00 | ナノ材料を用いた物理リザバーの構築と知的システム応用の可能性 田中 啓文 (九工大) |
| 14:00-14:25 | 培養神経回路網を理解するための柔らかいバイオエレクトロニクス 酒井 洸児、山田 康博、田中 雄次郎、後藤 東一郎、高橋 陸、水野 陽介、大友 泰輝、稲垣 卓弘、稲葉 謙介、田中 あや (NTT 物性研・NTT BMC) |
| 14:25-14:50 | 軸索配線を介した大脳オルガノイドの機能向上 池内 与志穂 (東大) |
| 14:50-15:15 | リザバーコンピューティングに基づく予測符号化モデルによる多感覚統合とノイズ適応型神経計算 香取 勇一 (はこだて未来大) |
| 15:30-15:55 | 光発振器ネットワークを用いた組合せ最適化と脳型情報処理への展開 稲垣 卓弘、稲葉 謙介、山田 康博、本庄 利守、生田 拓也、米津 佑哉、風間 拓志、圓佛 晃次、梅木 毅伺、合原 一幸、武居 弘樹 (NTT物性研) |
| 15:55-16:20 | 無線通信システムにおけるリソース選択問題へのレーザカオス意思決定の応用 長谷川 幹雄 (東京理科大) |
| 16:20-16:45 | クープマン作用素によるニューラルネットワークの線形化と応用 大久保 潤 (埼玉大) |
| 16:45-17:10 | 超低消費電力AIを実現するアナログ・インメモリ計算の数理基盤 酒見 悠介 (千葉工大・東大) |
| 17:25-17:40 | リザバー計算に基づく強化学習モデルの実細胞実装 齋藤 新、山本 英明、香取 勇一、門間 信明、佐藤 茂雄、平野 愛弓 (東北大) |
| 17:40-17:55 | 再構築可能な入力機構を備えたオンボード非線形アナログネットワークの高速機械学習機実装 広井 賀子、千葉 天翔、松永 大輝、後閑 哲也、田島 凛也、アンテサナ アンドレ (神奈川工科大・慶應義塾大) |
| 17:55-18:10 | 光超次元ベクトル生成に基づく脳型コンピューティング 岩田 卓也、新山 友暁、砂田 哲 (金沢大) |
| 18:10-18:15 | クロージング 砂田 哲 (金沢大) |