文部科学省 科学研究費助成事業 「学術変革領域研究(A)」
代表河野 崇東京大学 生産技術研究所 教授Researchmap
協力小林 正治東京大学 生産技術研究所 准教授Researchmap
多細胞ネットワーク上の情報処理の効率的なハードウェア実装方法の確立を目的として、超低電力回路基盤としてアナログ・デジタル混在集積回路を開発すると共に、専用デジタル演算回路によるプロトタイピングも実施する(右図)。
マルチセルラネットワークの情報処理をリアルタイム(以上)の速度で再現し、バイオ素子に迫るエネルギー効率を達成できる電子回路を実現する。これは、神経細胞の電気活動を再現するニューロン回路と、シナプス伝達と可塑性とを再現するシナプス回路とで構成される電子回路版神経ネットワーク(シリコン神経ネットワーク(SiNN))である。SiNNは現行AIの低電力実行ハードウェア(ニューロモルフィックハードウェア)として注目されているが、人工ニューラルネットワークと同等の処理に特化した極度に簡略化されたモデルが採用されており、マルチセルラネットワークの電気活動は再現できない。本研究では、カルシウムベース可塑性モデルやA01松井班、A03神谷班の研究成果など最新の実験脳科学の知見を取り込むことで生物規範性を高め、マルチセルラネットワークの機能を再現できるSiNN回路を開発する。神経細胞と同等の電圧・コンダクタンスレンジで動作する新しい超低電力アナログ回路技術を開発し、定性的神経モデリングと組み合わせることで生体神経ネットワークと同等のエネルギー効率での動作を目指す。このような回路では神経細胞の物理ノイズに起因する自発活動を容易に再現できるため,本研究領域の達成目標の一つである、ノイズによる自発活動を許容する超低消費電力脳型システムのハードウェア基盤に適合する。アナログSiNN集積回路の開発、試作に加え、マルチセルラネットワークのFPGAデジタル回路によるプロトタイピングも行う。これにより,A01松井班の推定する大脳皮質局所回路の機能的結合構造の実装や、A02山本班の人工神経細胞回路の再現、A04平田班のロボット制御への応用を可能とする。
代表平田 豊中部大学 理工学部 教授Researchmap
分担奥野 弘嗣大阪工業大学 情報科学部 准教授Researchmap
分担安川 真輔九州工業大学 大学院生命工学研究科 准教授Researchmap
生物脳を規範とした感覚運動学習モデルをFPGAに実装し、これをコントローラとするロボット適応制御を通して、現行の制御手法に対する利欠点を明らかにすると同時に、身体性を有するマルチセルラ情報処理システムから創発する現象を実証・評価する。
領域内の他の班で構築されるものを含め,マルチセルラ系の感覚運動学習を記述した数理モデルをリアルタイム動作可能な形でFPGAに実装し、実世界におけるロボット制御(多種感覚入力に対する運動出力制御)実験を実施する。特に、動物の脳機能の最も顕著な特徴の1つである自発活動と、それによる予測的な運動制御を適応的に獲得する過程を評価する。研究期間の後半には、領域内連携により、細胞とロボットをつなぐインターフェースを構築し、人工神経細胞回路をコントローラとするロボット適応制御技術を開発する。これらを通じて、身体性を有するマルチセルラバイオ計算モデルが実世界の多感覚情報と相互作用することにより創発する種々の現象を明らかにする。