
文部科学省 科学研究費助成事業 「学術変革領域研究(A)」 2024〜2028年度
2026年8月31日から9月1日にかけて、同志社大学室町キャンパス(寒梅館ハーディーホール)にて学術変革領域(A)「バイオ超越」の第3回夏合宿を開催しました。これまで2年間はチームビルディングを優先して函館および札幌近郊の北広島でのホテル合宿として実施してきましたが、今年度は公募班の先生方も2年目ということもあり、「アクセスのよい場所でコンパクトに」をモットーに、古都のキャンパスに集いました。領域メンバー・学生・アドバイザーの総勢92名が参加し、口頭発表33件(公募班報告17件、計画班報告9件、若手発表7件)とポスター発表49件のプログラムでした。ホテルからキャンパスへと舞台を移しても、休憩時間や情報交換会で班の垣根なく議論が続く「合宿らしさ」は変わらず、ホストしていただいた同志社大学の皆さまに心より感謝申し上げます。

今回の合宿の柱の一つは、2025年度から領域に加わった公募班の代表者による研究報告です。神経回路の再編成や意思決定・葛藤・味覚といった脳の高次機能を動物実験から追う研究(人羅さん、相馬さん、森島さん、北西さん、船水さん、相澤さん)、生物学的に妥当な学習則やスパイキングニューラルネットワークを用いた数理モデル研究(森田さん、信川さん、栗川さん)、リザバー計算の物理実装やロボット応用、さらにはノイズ場を用いたロボット制御学習アルゴリズムや新しい生体信号検出ハードウェアに関する研究(河合さん、池本さん、田畑さん、三浦さん)、そして培養神経回路の計測・操作技術などに関する研究(川口さん、酒井さん、吉田さん、高橋さん)と、数理・ハードウェア・ウェットウェアの領域3ターゲットを横断した研究成果について報告がありました。公募班への参加をきっかけに始まった領域内共同研究の具体的な成果も複数報告されました。また計画班からの報告でも、計画班同士や計画班と公募班との連携から生まれた研究成果が多く紹介されました。アドバイザーの根本先生からは「公募班の研究テーマが計画班の間を埋めるように広がっていて、領域の取り組みが強化されているように感じた」とコメントを頂きました。

若手発表では、最近筆頭著者として論文を発表した若手研究者や大学院生など、次々世代を担う7名の若手に登壇してもらいました。教師なし学習によりリザバー内部のアトラクタ構造を制御する手法(河合祐司さん、A01公募・河合班)、マウス一次視覚野のDigital Twin構築(笠置歩さん、A01松井班)、神経スフェロイド内部の長期計測のためのピラー型3次元電極アレイの開発(大友泰輝さん、A02公募・酒井班)、オータプス培養系を用いたシナプス小胞の同期・非同期放出機構の解析(内野鉱也さん、A03神谷班(桂林研))、生物学的に妥当性の高いシナプス可塑性モデルによる時空間スパイクパターン検出(古市隼大さん、A04河野班)、統合情報理論に基づく培養神経回路の解析(間山輝紀さん、A02公募・髙橋班)、スパイキングニューラルネットワーク型リザバーにおけるTD学習(田中柊真さん、A01香取班)と、数理からハードウェア、ウェットウェアまで幅広い話題が並びました。シニアな先生方からのフィードバックを今後の研究の糧にしてもらえればと思います。

2日間の合宿の最後に、アドバイザーの先生方からコメントを頂きました。合原先生からは、数理・ハードウェア・ウェットウェアの3分野が互いに引き合いながら進む領域の設計を「三体問題」になぞらえて評価していただくとともに、領域内での連携に閉じずに取り組みを外へ広げることや、若手が異分野の知識を身につけることの重要性をご指摘いただきました。堀尾先生からは、プリプロセッシングやポストプロセッシングも含めたシステムレベルで技術を捉えていくことも重要であるとご指摘いただきました。根本先生からは、「AI for Science」の潮流の中で本領域ならではのアウトプットを明確にすること、10年先のコアとなる技術を作ることへの期待を述べていただきました。池谷先生からは、共同研究が着実に進んでいることに対して高い評価をいただくとともに、急速に進化するAIツールを研究にどう取り込むかという視点について、具体的な実例を挙げながら最新情報を共有していただきました。細川先生からは、合宿の場でのコミュニケーションをさらに取りやすい形にするための提案をいただきました。
1日目午後にはポスターセッションを開催しました。計画班・公募班・アドバイザー研究室の学生・若手研究者を中心に49件のポスター発表がありました。もう少し長く時間を取れるとよかった、というのがオーガナイザーとしての次年度に向けた反省ですが、2時間半の持ち時間いっぱいまで会場のあちこちで議論が続きました。教員および学生全員での投票に基づき、7件の優秀ポスター賞が決まりました。おめでとうございます。ポスター賞の副賞は、いつもの通り、2月の領域シンポジウムへの招待券です。今度は仙台での国際会議で、さらに最新のデータを加えたご発表を聞けるのを楽しみにしています。(文責・領域代表 山本 英明(東北大学))

| 発表者 | 所属(大学/ポジション) | ポスタータイトル |
|---|---|---|
| 日下 大夢 | はこだて未来大学/修士課程 (A01-1 香取班) | 鳴禽類の発声学習を題材としたリザバー計算と予測符号化に基づく感覚運動情報処理モデル |
| 稗田 健美 | 同志社大学/博士課程 (A01-2 松井班) | 最適刺激画像を用いたマウスV1解析に向けた実験系の構築 |
| 西 悠聖 | 東北大学/修士課程 (A02-1 山本班) | 人工神経細胞回路を用いた物理リザバー計算における情報コーディング方式の検証 |
| 松本 遥 | 京都大学/修士課程 (A02-4 川口班) | 膜電位蛍光プローブASAPの改良 |
| 吉田 遼介 | 東京大学/博士課程 (X01 池谷研) | 大脳皮質への「書き込み」による質感知覚の人工的創出 |
| 進士 裕介 | 中部大学/博士課程 (A04-2 平田班) | A Cerebellum-Inspired Adaptive Control System for Gait and Posture in Humanoid and Quadruped Robots |
| 和田 一輝 | 九州工業大学/博士課程 (A04-3 池本班) | 冗長テンセグリティマニピュレータのための継続的なフィードバック誤差学習 |
「今回の合宿を通して、専門の異なる方々と自身の研究について議論できたことは、自分の研究を見つめ直す貴重な機会となりました。そのうえ、ポスター賞までいただき、大変励みになりました。今後は、異なる分野の方から見ても興味深いと感じてもらえる方向へ発展させていきたいです。」
日下 大夢 (はこだて未来大学/修士課程)
「ポスター賞をいただき、大変嬉しく思います。今後は今回構築した研究基盤を発展させ、疾患モデルとの比較など、新たな知見につながる研究に取り組んでいきたいです。共同研究者や指導教員の先生方にも感謝いたします。」
稗田 健美 (同志社大学/博士課程)
「このたびは優秀ポスター賞をいただき、大変光栄に思います。様々な視点からバイオ計算について議論させていただき、多くの刺激を得ることができました。今後も「バイオ超越」を目指して、研究に励みたいと思います。」
西 悠聖 (東北大学/修士課程)
「夏合宿では、普段周りで見ないような研究内容を学べました。その中で、蛍光プローブの技術開発という内容でポスター賞をいただけて大変光栄です。今後の研究では神経細胞が秘めている力を、文字通り「見て」いきたいです。」
松本 遥 (京都大学/修士課程)
「優秀ポスター賞を賜り、大変光栄に存じます。本発表を通じ、実験の設計から具体的な実装方法に至るまで、数多くの貴重なフィードバックを頂戴することができ、非常に勉強になりました。さらに、この機会に多くの方々と交流し、新たなご縁を頂けたことも大変有意義でした。今後も高い視座を持ち、研究に励んでまいります。改めて、このような賞を頂き誠にありがとうございました。」
吉田 遼介 (東京大学/博士課程)
「この度はポスター賞をいただき、大変光栄に思います。夏合宿では、普段接する機会の少ない分野の研究に触れ、分野を越えて意見を交わすことができ、大きな刺激となりました。今回の経験を糧に、今後も自身の研究をより一層発展させていきたいと思います。」
和田 一輝 (九州工業大学/博士課程)

同志社大学室町キャンパスで開催された第3回夏合宿に参加し、ポスター発表を行いました。本領域は実験神経科学から培養神経回路、数理モデル、デバイス工学まで幅広い分野の研究者が集まっており、口頭発表やポスターセッションでは、自分の専門とは異なる視点からのご質問やご助言を数多くいただきました。自身の研究を領域全体の目標の中にどう位置づけるかを考える良い機会になりました。また、若手研究者や学生にも多くの発表機会が設けられており、他班の学生の方々と直接議論できたことも大きな刺激になりました。今回いただいたご意見を日々の研究に活かすとともに、班を越えた連携にも積極的に関わっていきたいと思います。
沼田 晋太朗(同志社大学/五年一貫制博士課程3年)
京都の同志社大学室町キャンパスにて、第3回夏合宿を開催しました。領域発足から3年目を迎え、公募班も加わって2年目となる中、計画班・公募班からは、領域内で進められている数多くの共同研究の進捗が報告されました。また、講演やポスターセッションでは若手研究者による多数の発表があり、活発なディスカッションが繰り広げられました。本領域もまもなく5年間の研究期間の折り返しを迎えますが、班を越えた連携が着実に深まり、新たな研究展開につながりつつあることを実感しました。今後も、それぞれの共同研究がさらに発展し、領域全体として大きな成果につながるよう、私自身も一員として貢献していきたいと思います。