バイオ超越 - 脳神経マルチセルラバイオ計算の理解とバイオ超越への挑戦

文部科学省 科学研究費助成事業 「学術変革領域研究(A)」 2024〜2029年度

領域イベント

第1回夏合宿(第2回領域会議)を行いました。

2024.09.09

参加者全員による記念撮影

 2024年9月5~7日に北海道函館市湯川にて学術変革領域(A)「バイオ超越」の第1回夏合宿を開催しました。合宿の目的は,チームビルディング,目的共有,そして若手育成です。研究チームやその中での目的共有はもちろん既にできあがっているわけですが,同じ釜の飯を食いながら対面で膝を付き合わせて議論したり,領域発足後の成果を共有したりすることで,申請段階での想定を超える120%のシナジーを生み出します!
 合宿にはアドバイザー・領域メンバー・学生で総勢63名の方にご参加いただき、口頭発表(17件)とポスター発表(30件)を通して活発な議論が行われました。
 口頭発表は,ミッションオリエンテッドな議論ができるように,A01やA02などの研究項目ではなく,マルチセルラ数理モデル・マルチセルラハードウェア・マルチセルラウェットウェアという領域の3つのターゲットごとにセッションを分けて実施しました。また5月に開催した第1回領域会議(オンライン)では計画班代表が研究紹介を行いましたので、今回は各計画班の分担者の先生を中心に口頭発表をお願いしました。
 9月5日 18:40~21:30に実施したセッション①「マルチセルラ数理モデルによるバイオ超越に向けて」では,根東先生(A01分担),尾崎先生(A03分担),李先生(A01松井研助教),保坂先生(A01分担),徳田先生(同),藤原先生(同)から,げっ歯類を中心としたモデル動物脳の大脳皮質の機能計測やデータ解析,さらにはリザバー計算などの枠組みを用いて高次元の非線形ダイナミクスを計算論に展開する数学などについて紹介がありました。
 9月6日9:30~11:50に実施したセッション②「マルチセルラハードウェアによるバイオ超越に向けて」では,奥野先生(A04分担),安川先生(A04分担),河野先生(A04代表),守谷先生(A02分担)から神経系の情報処理機構を取り入れた新たな視覚認識システムや水中探索ロボット,さらには超低消費電力で動作するアナログ脳型ハードウェアについて紹介されました。
 さらにその後,お昼休憩を挟んで13:30~15:50に実施したセッション③「マルチセルラウェットウェアによるバイオ超越に向けて」では,西村先生(A03分担),森本先生(A02分担),住先生(A02協力),渡邉さん(A02平野研M2),内野先生(A03桂林研PD)から,ヒトiPS細胞を様々な脳領域の神経細胞に分化させる技術や,培養骨格筋組織を使った生体模倣ロボット,培養神経回路の新しい操作技術や神経活動のデコーディング方法,シナプス機能の生理計測について,最新のデータが共有されました。質疑応答の時間には,領域メンバーやアドバイザーに加えて,自主的に参加した大学院生・学部生からも研究の内容に関する質問が寄せられ,活発な議論が展開されました。
 領域アドバイザーの先生からは,「若い人同士で連携して,新しい成果を生み出してほしい」(合原先生),「バイオ『優位性』ではなく,バイオ『超越』を目指して挑戦してほしい」(堀尾先生),「バイオで既存の技術を超越するだけでなく,逆に,バイオを超越する新技術を作り上げるという方向も含めて双方向に進められるとさらに盛り上がるのではないか」(根本先生),「夏合宿などの領域企画の中に教育講演のような内容も盛り込めると,異分野の相互理解が効率的に行え,また学生の教育にもなる」(池谷先生),「違う研究室に行って異分野コミュニケーションを図るなど,若手の会の活動も盛り上がっていってほしい」(細川先生)などの激励のコメントを頂戴しました。

口頭発表の様子

ポスターセッション

 2日目の夕方から夜にかけてポスターセッションが行われ,9つある計画班すべてから大学院生や学部生による30件の発表がありました。対外的には未発表のデータも含めて,各研究班で進められている個別のテーマが議論できたことで,新しい共同研究の可能性に関するディスカッションも進んでいました。いろいろな分野で活躍されている先生方に向けて自分の研究を直接プレゼンできたことは,学生にとって大きな刺激となったようです。
 また今回の合宿では,学生および若手研究者の投票で「優秀ポスター賞」を決めることを若手の会幹事の加藤先生がご提案くださり,早速実施しました。その甲斐もあって,学生同士でも熱心な意見交換が行われていました。優秀ポスター賞に選ばれた学生には、若手研究者をエンカレッジする目的で、副賞として翌2月に仙台で開催予定の領域国際シンポジウムへの招待が贈られました。

ポスターセッションの様子

「優秀ポスター賞」受賞者リスト

発表者所属(大学/ポジション)ポスタータイトル
太田 怜志公立はこだて未来大学/学部4年ヒステリシスを示す振動子を用いたリザバー計算
河本 賢史郎同志社大学/博士1年カルシウムイメージングからニューロンの接続が予測できるかどうかの分析
室田 白馬東北大学/博士1年人工神経細胞回路における神経アンサンブルの可塑性
岸田 理子早稲田大学/修士1年ナノチューブスタンピングによる神経細胞への直接的物質導入
沼田 晋太郎同志社大学/修士1年運動野へ移植した神経細胞塊が運動機能に及ぼす影響を解明するための基盤技術開発
森田 耀仁大阪工業大学/博士3年生体視覚神経系に学んだ前処理のCNNへの応用

受賞者のコメント

「ポスター発表で優秀賞をいただき、大変光栄に思います。このような評価をいただけたことは、私にとって大きな励みとなりました。また、発表を通じて様々な研究分野の研究者の方々と交流し、多くの新しい視点や知見を得ることができました。この経験を活かし、今後もさらに研究を深めていきたいと思います。」

河本 賢史郎 (同志社大学/博士1年)

「第1回夏合宿では、バイオ分野に関する理解を深め、学びを得ることができた貴重な経験となりました。ポスター発表において頂戴したご助言を今後の研究に活かし、より一層研究を深めていきたいと考えています。」

岸田 理子 (早稲田大学/修士1年)

 「優秀ポスター賞を頂き,大変光栄に存じます。この度の夏合宿では、数多くの興味深い研究について知ることができ、大変勉強になりました。この経験を生かして、今後も研究活動に励んでいきたいと思います。」

森田 耀仁 (大阪工業大学/博士3年)

「優秀ポスター賞」受賞者

特別講演「未来の知能:脳とロボティクスと人工知能の融合により新しい知能の創出」の開催

 合宿の最終日には,夏合宿幹事の香取先生が,函館市街と函館山を散策するエクスカージョンと,合原一幸先生(東京大学特別教授,領域アドバイザー)と浅田稔先生(大阪国際専門職大学副学長)による特別講演会「未来の知能:脳とロボティクスと人工知能の融合による新しい知能の創出」を企画しました。合原先生からは,ニューラルネットワーク研究と人工知能研究との結びつきの歴史や,数理工学と社会との様々な接点についてご講演いただきました。そして浅田先生からは,ロボカップの設立にかけた想いや,痛みを認識する最新のロボットなどについてご講演いただきました。また最後のパネルディスカッションでは,事前に寄せられた多くの質問に答えて頂きました。その中で、「研究者人生で最も嬉しかったことは?」という質問に対して、合原先生の「教え子が育って活躍してくれること。今日、香取くんにこんな素敵な場を用意して貰えたこともとても嬉しい」というお答えには、理想的な師弟関係の一端を垣間見ることができました。

特別講演の様子

第1回夏合宿(第2回領域会議)主催 香取(A01-1代表)からのコメント

「今回の合宿では、異分野の研究者が集まり、互いに刺激を受ける場となりました。特に、多くの学生や若い研究者も参加し、活発な討論を通じて新たな視点やアイデアが生まれ、バイオ超越に向けた研究の進展に繋がることを実感しています。合原先生・浅田先生による特別講演会も開催され、とても楽しく充実したイベントになりました。今後もこの合宿で得られた成果を活かし、さらなる研究の深化を目指していきたいと思います。」

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